「なんちゃって予防歯科」にご注意!

さて、今日はいよいよ根の治療の仕上げができるかな。
ちょっとこれを咬んでみてくれる?

はい。

どうだろう、咬んだ時痛むかな?

いえ、大丈夫です。

じゃあ、今日は根の治療の仕上げということで、根充しよう。
ラバーダムつけるね。

はい、よろしくお願いします。
------- 治療終了 -------

最後にとったレントゲンが、これです。
バッチリ、根充できました。
術前と比べて違いがわかるかな?

はい、全然違いますね。
ありがとうございます。

前にも言ったけど、根の治療は歯科医の治療に対する思いが現れやすい。
僕の治療に対する思いも、佐々木さんに伝わってくれているといいけど。

一生懸命やってくださっているのが十分伝わってきました!!

良かった!
じゃあ、この前の続きで、今日は予防歯科について。

予防って大事ですよね。

では、僕から質問。
佐々木さんは、歯科で何について予防したいの?

えーっと、虫歯と歯周病です。

なるほど。
狭い意味で予防歯科というと、そういうことになるかな。
虫歯と歯周病を予防して、佐々木さんはどうなりたいの?

自分の歯を抜いたりしないで済むようにしたいです。

そうだよね。
ただ、もうすでに何本か歯を失ってしまっている場合、例えば部分入れ歯が入っていたとしよう。
部分入れ歯のクラスプは、義歯の設計次第では、残っている歯に負担をかける。

つまり、入れ歯で残っている歯をダメにしてしまわない設計ができるか、義歯が合わなくなっていて残っている歯に負担をかけていないかなど、判断できる目を持っていなければならないと思っている。
だから、予防といってクリーニングだけしていても歯を失うことはある。

確かにそうですね。

インプラントを入れることだって広い意味では予防だよ。
残っている歯に負担をかけないという治療法は、インプラント以外できないからね。
歯ブラシがきちんとできるように歯並びを整える矯正治療だって予防といえる。

つまり、何が言いたいかというと、歯周病を予防したいからといって、クリーニングだけ受けていても、歯を残せるかはわからないということ。

そうですね。
この前、初めて先生にアゴがガクガクしていることを指摘されました。

そうでしょ?
僕たちは歯ばっかり見てしまい全体を見ることを忘れてしまいがちだ。

アゴがガクガクしていれば、将来顎関節症を引き起こすことだってあり得る。
顎関節症になってしまって治療しても、それは治療であって予防ではない。
予防とは病気の発症を未然に防ぐことだからね。

なるほど。

広い意味で予防歯科をとらえるなら、歯周病や虫歯の知識だけでは不十分で、総合力が問われるということなんだ。

総合的な目をもって、口の中をとらえるって、難しそうですね。

うん、難しい。
だから、僕は本当の予防歯科を実践できる歯科医は少ないと思っているよ。

でも実際は、「予防歯科」という耳障りのいい言葉で、患者を引き寄せ、実際のところは衛生士のクリーニングだけという歯科医院というのは気を付けた方がいい。
また、「抜きません、削りません=予防歯科」と勘違いしている歯科医師もいる。
その歯を抜くことで、他の歯が守られることだってあるのに。

そして、なぜ歯科医院が予防を強調したがるかというと、歯科で一番利益が上がるのは、実は、衛生士のクリーニングだからなんだ。
なにしろ治療と比べ、材料コストがかからないし、また、人件費も歯科医に比べて安く抑えられる。

治療内容によっては、衛生士が仕事をした方が、保険点数が高い場合もあるよ。
だから高い給料を払ってわざわざ歯科医を雇い、コストをかけて治療をさせるより、衛生士にクリーニングさせていた方が儲かる、保険診療のおかしな仕組みだよ。

そして、それを分かっている開業コンサルタントが、
「衛生士をたくさん雇って予防歯科を売りにしていきましょう」と歯科医院を次々と開業させる。
結果、治療もろくにできないような歯科医師がいたるところで予防歯科をうたって歯科医院をやっている。
それを知らずに真面目に通っている患者さんがいるというのは、本当に気の毒でしようがないね。

医院の戦略にまんまとはまって、衛生士に回されないように気をつけなきゃいけないよ。
ただ、一生懸命やっている衛生士ももちろんいるから、これは見極めた方がいい。

どうやって見極めるたらいいのですか?

そうだな。
担当の衛生士が頻繁に変わったりするところは危ないかな。
院長がいくら予防だ、予防だと叫んだところで、スタッフはシビアに医院を見ているから、その医院で自分のやりたい予防ができないと分かれば、真剣な人ほど、すぐに退職する。
だから、スタッフの入れ替わりが早いのが特徴だね。

なるほど。

予防歯科はとても大切だけど、経験が浅く、他にとりえのない若い歯科医が予防歯科というあいまいで耳障りの良い言葉を売りにしてやっている「なんちゃって予防歯科」には、要注意だね!!今日はここまで!

ありがとうございました。